別姓婚も同性婚も包括できる生活協力制度を思案する

 

まず、以下の記事でも述べたように、私は婚姻を選択的夫婦別姓及び同性婚にも適用させるために現行法を改正することには反対しています。

とはいえ、他者が姓や性に関わらずパートナーと共同生活を営みたい想いを否定する考えは全くありません

その生活共同体を公的に保障されたいという想いも理解しているつもりです。

しかしながら現行法の利点を鑑み、現行法を維持することが日本国民に有益であるという結論に私個人は至りました。

感情での意見も大事だと個人的には思いますが、国民の生活に直結する制度や法律は国家運営の危機管理と綿密に関わることですので、感情だけで判断すべきではないと考えます。

ここでの問題は何より、困っている当事者が存在しているということ。

ただし、この当事者を救うための案が、民法及び戸籍法の改正という国民生活の根幹を揺るがし全体に多大な影響を与える可能性があるものに関しては慎重になるべきで、新たな法制度や正式な公的枠組みを設けて当事者の生活を営みやすくすることが建設的なのではないかと思います。

このような提案をすると、法改正を訴えてらっしゃる方々の中には「それは自分が求めているものではないから、あなたが勝手に訴えればいい」とおっしゃる人もいるでしょうが、そもそも個人の環境としては現行の法律のままで問題はないけれど、変更されてしまうと影響があるから反対しているわけです。

それでも困っている人の不都合をできる限り解決するため、「こちらのアプローチをすればいいのでは?」と提案をしているということをご理解いただければと思います。

また、「婚姻制度と二重の法律になるので非合理的で良くない」という意見もあるようですが、婚姻制度を維持しながら不便を解消できるようになるならば非合理的だとは思いません。

不便を解消することではなく法律を改正することが目的なため、「このような制度があれば無理に民法や戸籍法を改正する必要はない」と思う人が増えることを恐れているのかとすら感じてしまいます。

各々の確固たる信念のもと法改正を訴えている方々もいらっしゃるでしょうが、問題解決が目的ではなく婚姻制度の廃止や戸籍制度の廃止を目論んでいるにも関わらず、正直にそうとは言わず、聞こえのいいことを言って当事者である方々を利用・扇動し活動している方々に対しては辟易します。

 

さて本来、このような提案は専門家や国会議員がきちんと話し合って制度設計すべきものです。

とはいえせっかくなので、別姓を望むカップルや同性カップルさらには性別はどうあれ友人同士など婚姻関係ではなくとも生活を共にしたい2人が公的に保障される制度を、一般人の個人的一案として考えてみたいと思います。

 

 

事実婚の問題点

現在、異性愛で別姓を望むカップルには事実婚という方法があります。

事実婚とは、「結婚している」という意識が当事者にはあるものの婚姻の届出をしていない状態なため、法律上は婚姻とされない結婚のこと。

法律婚ではないため戸籍の移動を伴わず、カップルどちらも姓の変更はありません。

公的には、住民票における『世帯主との続柄』を『夫(未届)』『妻(未届)』と記載する(各自治体による)ことで証明されます。

これにより2人が同一世帯となり、同棲と結婚(事実婚)を区別することができます。

事実婚であることを申し出て要件に合致していれば、年金や公的医療保険において扶養や遺族年金の受給など婚姻(法律婚)と同様に取り扱うものとされています。

事実婚の問題点としては、以下が挙げられます。

①子は母親の戸籍に入り(家庭裁判所の判断で父親の戸籍に入ることもできる)、父親の認知があっても婚外子にあたる『非嫡出子』となること。

②家族法上の観点から、子について親権があるのは片親のみである(共同親権が持てない)こと。

③互いの遺産に関して相続権がなく(遺贈するために遺言等が必要かつ相続税の軽減がない)、離婚の際にも財産分与や慰謝料等の支払いで贈与税が発生する場合がある(法律婚では発生しない)こと。

④事前に任意後見契約を結んでいなければ、パートナーが認知症で判断能力が衰えた場合などに成年後見制度(本人に代わって財産や権利を守り本人を法的に支援する制度)を利用できないこと。

⑤確定申告の際に、配偶者控除・配偶者特別控除を受けられず生命保険控除や医療費控除の合算もできないこと。

⑥法律婚では配偶者の戸籍抄本などを取得できるが、事実婚ではできないこと。

⑦夫婦の一方が海外赴任等をする際に、事実婚では配偶者ビザや永住権が認められない場合が多いこと。

⑧パートナーとの家族関係を証明しにくいことにより、手術の家族同意書が署名できない・入院家族の病状説明を受けられないという病院でのトラブルがあること。

⑨事故等の保険金請求をできるのは法律上の親族に限られていたり、生命保険の受取人や住宅ローンの連帯保証人になりにくかったり、配偶者であれば請求可能な損害賠償が認められなかったり、クレジットカードや携帯電話などの家族会員になれなかったり、雇用先や勤務先の家族手当が支給されなかったり等、民間企業との契約で不都合がある場合が多いこと。

 

パートナーシップ制度の問題点

現状、日本におけるパートナーシップ制度は、LGBTQカップルの関係を公的に認める各自治体独自の制度です。

戸籍上同性同士はもちろん、心身の性が異なるトランスジェンダーや自身の性自認が曖昧であったりどちらでもなかったりする場合もあるため戸籍上異性同士でも利用できます。

パートナーシップ制度により、公営住宅への入居など婚姻関係にないと受けられなかった自治体のサービスを利用できることになります。

また、賃貸住宅への入居、病院での手術や入院時の付き添い、携帯電話料金・運賃・入場料などの家族割引、生命保険金の受取などについて、婚姻カップルと同様なサービスを受けられるよう条例が定めることにより、条例に違反した場合は是正勧告や事業者名公表などの措置をとる自治体もあります。

とはいえ、相続に関してなど上記事実婚で起きるトラブルや不都合はパートナーシップ制度でも同様に起きますし、法律で同性間に認められていない税制・社会保険の優遇措置などは適用されず扶養に入ったり扶養控除を受けたりすらできません。

パートナーシップ制度は現状、「証明を付与することで民間のサービスを受けやすくするため」程度の制度と言えます。

 

 

新たな国家制度の新設を考える

事実婚およびパートナーシップ制度の問題点を踏まえ、その問題点を解消する生活協力制度を提案します。

※現状存在しない名称は全て仮称、法律や制度の運用に関しても仮の想定です。

1.自治体によるものではなく法律による国家制度とし、現行の事実婚への公的対応およびパートナーシップ制度は廃止します。

2.生活協力を結べる相手は1人のみ(性別は異性でも同性でも可)とし、戸籍筆頭主となる戸籍をそれぞれが編成したうえで、互いに生活協力を結んでいることを戸籍の身分事項へ記載し紐付けます。

パートナーの戸籍抄本取り寄せも可能とします。

3.世帯としての続柄は「生活協力者」、連れ子との続柄は互いに「父(母)の生活協力者」「生活協力者の子」とします。

4.配偶者控除および配偶者特別控除・国民年金第3号被保険者は対象外(実子をもうける異性カップルには婚姻を推奨するため)としますが、扶養控除には生活協力者ならびに生活協力者と戸籍を同一とする子(連れ子や里子・養子など)も該当します。

5.生命保険控除や医療費控除の合算が可能、配偶者と同等の相続権が付与され遺族年金の受給もできます。

6.特別養子縁組に関しては、実子をもうけるのと同義である点・婚姻カップルでもハードルが高い点から、対象外とします。

そのため、生活協力制度を結んでいたとしても同性カップルおよび別姓カップルが第三者の子を迎え入れるには、現状どおり里親制度または普通養子縁組を利用することとなります。

※子を家族に迎え入れる制度については、同性婚を考える記事をご参照ください。

7.異性カップルが婚姻せずに生活協力制度利用のまま子をもうけた場合、子は母親の戸籍に入り親権も母親のみとなりますが、DNA鑑定による証明があれば父親にも親権が発生(続柄も「父」「子(長男・長女等)」とでき、相続権も発生)ならびに母親ではなく父の戸籍に入ることも可能とします。※婚姻関係になくとも生活協力制度を締結している場合に限り共同親権を認める特例

また、認知により非嫡出子の相続権が認められていることからも、これに伴い嫡出/非嫡出の別を廃止し、相続権はDNA証明によるものとします。

そのカップルが生活協力制度を解消した場合、話し合い及び子の意思により、母の戸籍から父の戸籍への移動/父の戸籍から母の戸籍への移動を認めます。

8.不妊治療助成は受けられますが、卵子提供・精子提供・胚提供による生殖補助医療の利用は不可とします(ただし、未婚女性への適用が国内法で認められた場合は準ずる)。

※生殖補助医療に対する考えについては、同性婚を考える記事をご参照ください。

9.同性カップルが婚姻できずとも同姓としたい場合は、生活協力制度を締結した上でなら『氏の変更届』での改姓を可能とします(国際結婚での改姓と同じ手続き)。

※国際結婚に伴う氏の変更については、選択的夫婦別姓(別氏)を考える記事をご参照ください。

10.外国人パートナーは配偶者ビザならびに家族ビザ対象外とし、外国人パートナーが永住権保持者であれば生活協力制度を締結できます(日本人パートナーの戸籍身分事項に【生活協力者】として記載する)。

※配偶者ビザに関しては、同性婚を考える記事をご参照ください。

外国での滞在ビザについては、フランスのPACS(パックス)ことPacte Civil de Solidarité(民事連帯契約制度)でも申請可能なVPF(carte de séjour vie privée et familiale)やカナダの事実婚に当たるCommon-law Partner(コモンロー・パートナー)でも申請可能なFamily Classのような、事実婚や同性婚であっても家族ビザが認められている国に関しては該当するよう働きかける外交努力をしていくこととしますが、日本側は国外の同性婚による配偶者ビザおよび家族ビザは発給していない以上、認められないことは覚悟する必要があります。

11.性別に関わらず恋愛関係にない単身者同士もしくは単身親世帯同士、単身者と単身親世帯が生活協力に使うことも問題ないとします。

 

以上の提案では、あくまで生活協力制度なので公的に夫婦と認められる制度としては婚姻が唯一のままとなり、婚姻と重複した法律とはならないかと思います。

また、素人考えの一案であることをご容赦の上、ご指摘はコメント欄にていただければありがたいです。

家族の多様性という面からも、別姓カップルや同性カップルに限定せずとも婚姻以外の家族が公的に認められる制度があればいいなとも思います。

証明カードの発行もできるようにすれば、氏/姓が異なる場合の家族確認もスムーズです。

生活協力制度により公的な家族と認められれても、公的な夫婦とは認められないことに意義を見出せないカップルもいるでしょう。

しかし公の制度というのは、国家運営を円滑にするためのもの。

婚姻は子の育成のために必要なものと考えますが、そのカップル2人が夫婦(または夫夫/婦婦)であるという認識をもっているならば法律に拠らずとも夫婦(または夫夫/婦婦)であると個人的には捉えています。

 

 

 

 

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