日本における婚姻制度とは/戸籍制度の重要性

 

日本における婚姻制度とは

 

婚姻とは、カップルが結婚し夫婦となったことを公的に承認される制度です。

日本においては日本国憲法第二十四条にて権利を保障され、民法および戸籍法にて要件を定められており、婚姻することで公的に家族であると登録・管理されることになります。

結婚自体は文化・風習であり個人の自由に基づくものだと思いますが、婚姻が公的に保障される必要性については、人なくして国は存在しないため「国家は国民に子を生み育ててもらうことが必要不可欠」であり、公的に登録・管理することの利点として、その公的保障のために各家族の生殖・育児に対して補助を行いやすいという側面が大きいのではと考えます。

妊娠出産育児に備え配偶者控除および配偶者特別控除という扶養控除が設けられている点、配偶者に遺産相続権がある点は、血縁のない夫婦2人(いとこ同士は結婚できるため血縁のない2人ばかりとは言い切れませんが)が家族となり子を育んでもらうからこそ。

「子を生み育てない子無し夫婦にも適用されるのは不公平」との意見もありますし、税制に関しては婚姻にまつわるものに関わらず時代に応じて考慮する必要があるとは思います。

しかし、子を持たないことを決めている夫婦でも生物学上妊娠する可能性は0ではないため国としては適用させておくべきだと思いますし、身体的要因により子を持てない夫婦には適用させないとなると、妊娠不可能な身体的要因の有無を婚姻時に証明する必要性が出てきてしまい、婚姻手続きのハードルが上がってしまうえ検査や申請等による肉体的および精神的苦痛が伴います。

そのため、婚姻のいわゆるメリットとされる控除や権利を一律にしていることは平等かつ合理的であり、妥当であると理解しています。

それでも「みんな平等に!」というならば、つまるところ、子無し夫婦の件でも選択的夫婦別姓の件でも同性婚の件でも婚姻制度自体の廃止が究極の平等であり、平等のため婚姻制度の廃止を堂々と唱えてらっしゃる方に関しては、賛成はしませんが一理あるとも思います。

私が婚姻制度の廃止に賛成しない理由としては、「国家の存続には国民に子を生み育ててもらうことが必要不可欠」という大前提を蔑ろにすべきではないと考えているからです。

選択的夫婦別姓や同性婚の問題では、婚姻はカップルや個人の権利や保障として議論されがちですが、現行の婚姻制度は、あくまで新たに生まれてくる命のための制度だと捉えています。

 

 

戸籍制度の重要性

日本の婚姻制度において、その基盤となるのが戸籍制度。

法務省サイトには、

戸籍は,人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので,日本国民について編製され,日本国籍をも公証する唯一の制度です。

とあります。

日本における戸籍制度は、歴史研究により6世紀頃の古代から存在したとされていますが、近代で全国的に施行された公的な戸籍制度は、壬申戸籍とも呼ばれる明治5年に施行された戸籍法(明治5年式戸籍)に始まります。

明治31年(1898年)制定の民法において家制度が規定され、家制度に基づく戸籍法によって「家」単位で戸籍を作成することになり、当時の民法・戸籍法下では三世代以上の親族が一つの戸籍に在籍することが認められていました。

第二次世界大戦後、昭和22年(1947年)の日本国憲法の施行によって家制度は廃止。

昭和23年(1948年)1月1日をもって、「夫婦及びこれと氏を同じくする子」単位で作成され一つの戸籍に最大で二世代までしか在籍できない現在の戸籍法および戸籍制度が施行されました。

これにより、子は婚姻した時点で夫婦となるため、親の戸籍から離れて新たな戸籍を作成することになります。

婚姻届を提出することを「入籍」と言ったりしますが、現行法では基本的に婚姻届を提出することで「どちらかの戸籍に入籍する」のではなく、2人で新たな家族の戸籍を新規作成し、その際に夫と妻のどちらを戸籍筆頭主とするか定めます(戸籍筆頭主の氏/姓が家族全員の氏/姓になります)。

ただし、以下の要因などで自身が戸籍筆頭主である戸籍をすでに有している人が婚姻し戸籍筆頭主であり続ける場合は、自身の戸籍に婚姻相手が入籍する形になります。

●離婚し、子と戸籍を共にしている。
●離婚したが、親の戸籍には戻らなかった(子がおらず親と氏を共にする場合は、親の戸籍に戻ることもできる)。
●婚姻や離婚ではなく、分籍にて親の戸籍から離れた(分籍した場合、親の戸籍には戻れない)。
●未婚で出産した。
●日本人配偶者のいない外国人が帰化して日本人になった。

さて、この戸籍制度。

制度としては変遷していますが、現行戸籍は明治31年式戸籍以降の制度との紐付けを行いながら制定されてきているため、国家は少なくとも明治31年からの国民のルーツを把握できる状態であり、子の国籍取得について親の国籍を継承するという血統主義としている日本にとって、理に適った制度であると言えます。

国家が国民全員の日本国籍取得以降のルーツを把握している、つまり国家が国民全員の身元を明確に保証できるということだからです。

一方、出生地主義の国では、親の国籍に関わらずその国内で生まれれば、出生届を出すことによりその国の出生証明が発行され、国籍を得られます。

また、生まれた子の親は、元々は在留資格を保有していなくとも、その子(国民)の保護者として在留ビザが与えられることが多いです。

そのため、移民国家を標榜しているのならば出生地主義であって然るべきだと思います。

では、出生地主義国では、どのような国民管理を行っているのか。

国によってバックグラウンドや施行状況が違うので一概には言えないですが、私が知っている中で例をあげると移民国家であるカナダ。

国民を把握・管理するものとして、日本のマイナンバーにあたるSIN(Social Insurance Number)という社会保険番号が発行されていますが、これは、納税管理のための個人番号なので、カナダ人でも外国人でもカナダで就労(アルバイトを含む)をする場合、外国人も必ず発行してもらわないといけないもの。

なので、日本の戸籍に対応する個籍(個人籍)とは言えないかと思います。

また、カナダ国民(市民権を有するもの)がパスポートを発行する場合、1人のGuarantor(保証人)と2人のReference(身元保証人)が必要になります。

Guarantorは、以下①か②のどちらかである必要があります。

①申請者と個人的に申請者と2年以上既知(氏名や年齢、出生地など本人について基本的な事項を確認できる程度)であるカナダパスポート保持者
②実際に活動中の医師、大学の学長、歯科医、裁判官、弁護士、公証人、薬剤師、警察官、銀行・信託銀行またはその他の金融機関(現金引き出しや預金などの銀行業務を行う機関)のサイン権限を持つ職員、獣医、などのカナダ旅券局により指定された職業の人(カナダ人である必要はない)

Referenceには、申請者の配偶者と被扶養者、両親、義理の両親、子供と子供の配偶者、兄弟姉妹と兄弟姉妹の配偶者、義理の兄弟姉妹、祖父母と祖父母の配偶者、義理の祖父母、孫と孫の配偶者、同じ住所に住む人(ルームメイトなど)、つまり家族や親族はなれません

ちなみに、16歳未満の子供のパスポートを申請する場合は、その親が申請者となり、両親が2年以上の付き合いであれば申請者でない方の親(カナダパスポート保持者である場合に限る)がGuarantorになれ、Referenceは不要のようですが、子供の頃にパスポートを取得していても更新を忘れていて16歳を過ぎてしまえば、再申請には2人のReferenceが必要になります。

(参考:Goverment of Canada(Canada.ca)|passport and travel documents)

言ってしまえば、個人の身元は国ではなく第三者の個人によって保証されているということ。

その点、日本のパスポートは、パスポートの発行元である国家自体が国民のルーツまで把握した身元保証人なわけです。

日本のパスポートはノービザ滞在できる国が多いなど国際的に信頼が厚いのは、過去の日本人たちの振る舞いがよかったからとか外交による成果との見方が多いようですが、私はそもそも戸籍制度による身元保証の根拠があることが大きいのではと考えています。

さらに、国際結婚を日本で先に申請する場合、外国人配偶者はパスポートと出生証明、そして婚姻要件具備証明書(独身であるとか結婚要件を満たしていることを証明する書類)の提出が必要ですが、カナダには独身証明などの婚姻要件具備証明書該当する証明書が存在しないため、在日カナダ大使館・領事館で本人が宣誓するだけで発行される結婚宣誓書(Marriage Affidavit)が婚姻要件具備証明書となります。

出生証明、SIN、パスポート、結婚証明は、紐づけることはあってもそれぞれ独立した管理体制であり、そこまでシビアに国民を管理しないのは、国民に子を生み育ててもらわずとも移民によって国家を維持できるからなのかなと思ったりもします。

しかしそれはカナダの事情。

移民国家は移民国家で様々な問題を抱えていると思いますが、日本国民である私がとやかく言うことではないため控えます。

が、少なくともそれくらい日本とカナダ、血統主義国と出生地主義国、戸籍制度のある国とない国では違いがあるということ。

もちろん、日本が戸籍制度をなくしたからと言って、カナダと同じ制度運用になるとは思いません。

しかしながら、むやみに現行の戸籍制度を廃止し個籍(個人籍)に移行するより、維持する方が日本国民にとっては利が大きいと思います。

というのも、日本に帰化していない外国人在留者(帰化した方は外国人ではないので、変な言い回しですが)は、戸籍を取得できません。

稀に勘違いされている方もいらっしゃいますが、日本人と結婚しただけでは日本国籍は取得できないからです。

日本人と結婚すれば戸籍筆頭主の婚姻事項の欄に配偶者としては記載されますが、『戸籍に記載されている者』には記載されないため、当人の戸籍謄本とはなりません。

また、外国人は日本の法律による結婚改姓はできませんので(外国において漢字・ひらがな・カタカナを伴う日本語発音による姓は存在しないし、そもそも改姓は自国の法律による)、日本国籍に帰化しない限り日本姓は取得できません

国際結婚で夫婦同姓とされているご夫婦は、日本人側が個人の改姓手続きを行ったか、外国人側が通名(通称名)を登録・変更したか(こちらは便宜上の夫婦同姓と言える)です。

亡くなったことが未届けの外国在留日本人の戸籍を利用し、その子供であるとして無関係の外国人が届け出る等、やり方によっては戸籍を乗っ取り日本人になりすます行為(いわゆる背乗り)をされてしまう場合もあるようですが、少なくとも日本国内では、個人だけでなく家族関係を把握・管理している戸籍を背乗りするのは簡単ではないと思います。

いわゆるスパイ防止法やスパイ活動防止のための諜報機関がない日本はスパイ天国と言われていますが、それでもそこまでボロボロになっていないのは、日本語という特殊な言語、他国と陸続きではない島国であるということ、そして何より戸籍制度に所以するのではと考えています。

以上のことから、私はまず、戸籍制度の廃止や個籍(個人籍)制度への移行には強く反対します。

ちなみにマイナンバーに関しては、せっかく導入したのだから、税制や社会保障など国籍管理以外のところで有効活用してもらえればと思います。

 

 

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