同性婚を考える

 

まず私は、婚姻にまつわる法律に同性婚を適用させるために現行法を改正することには反対しています。

しかしながら、他者が姓や性に関わらずパートナーと共同生活を営みたい想いを否定する考えは全くありません

その生活共同体を公的に保障されたいという想いも理解しているつもりです。

しかしながら現行法の利点を鑑み、現行法を維持することが日本国民に有益であるという結論に私個人は至りました。

新たな法制度や正式な公的枠組みを設けて該当者の生活を営みやすくすることは積極的に行うべきだと思っています。

また、反対はしますが、各々の確固たる信念のもと法改正を訴えてらっしゃる方々を否定する気もありません。

ただ、「選択肢が増えるだけ」「あなたには何の影響もない」「日本は遅れている」等の思考停止したナンセンスな法改正賛成意見に対して思うところを、言論の自由の下、法治国家かつ国民に主権をおく民主主義国家・日本の一国民である私個人の見解を以下にまとめます。

 

 

はじめに

異性愛も同性愛も近親愛も動物性愛も植物性愛も無機物性愛も二次元性愛も小児性愛も、どのような性愛であっても相手を想い慕うことは全て尊いことです。

ただし動物性愛・植物性愛・無機物性愛・二次元性愛に関しては、客観的に相互の了承を得ることが不可能であり、小児性愛もそれに近く小児保護の観点からも行動に移してしまうことは規制されて然るべきなため、片思いに留めておくしか方法のない恋愛感情かなと思います。

一方、成人同士あるいは同世代同士の異性愛と同性愛に関しては、両思いという形で両者の合意が認められるので、異性愛も同性愛も他者にとやかく言われることではないです。

ただし婚姻に関しては、近親婚(異性愛・同性愛どちらも)と同性婚を認めるために現行法を改正するべきではないというのが私の見解です。

というのも、詳しくは婚姻制度に関する記事で述べておりますが、日本の婚姻制度は子を成す前提で制度設計し、そのために配偶者控除等のメリットがあると考えているからです。

2人共と血の繋がった子を授かる可能性は、異性婚だと0%ではないですが、近親婚を含む同性婚の場合は0%です。

異性愛としての近親婚も、遺伝子問題等の生物学的観点から法律で認められていないのは仕方ないかなと思います。

婚姻はカップルや個人の権利や保障として議論されがちですが、現行の婚姻制度は、あくまで新たに生まれてくる命のための制度だと捉えています。

 

 

養子で子を持てる?

養子と聞いてイメージするのは実子以外の子を家族に迎え入れることかと思いますが、制度としては大まかに3種類に分かれます。

一つ目は、里親制度

「社会的養護を必要とする」と児童相談所が認めた子供の養育を里親に委託し、実親が子供を養護できるようになるまで・子供が自立するまで等の一定期間を前提に「家庭と同様の養育環境」を対象の子供に提供する制度です。

里親になる場合は基本的な財力などが条件としてあるものの、子育て経験のない人や単身世帯、共働き世帯、同性カップルも里親になることができます。

里親制度で子供を迎え入れる場合、正確には養子ではなく「子供を預かっている」状態(里子と呼ばれる)であるため里親も里子も戸籍の変更はなく、里親には里親手当および里子の生活費・学校教育費・医療費などが支給されますが、相続権は発生しません。

二つ目は、普通養子縁組

養親の年齢が20歳以上・養子は養親の年齢より年下であれば、養子が15歳以上の場合は養親と養子の同意によって成立し、養子が15歳未満の場合は養親と養子の親権者(または代理人)の同意と『養子縁組許可』を求める審判を家庭裁判所に申し立てることが必要で、戸籍上は養親が戸籍筆頭主(および配偶者)である戸籍に養子が入籍することになります。

ただし、再婚相手の連れ子等すでに同一戸籍に入っている状態で親子関係を生じさせるために普通養子縁組を申請した場合は、戸籍に変動はなく身分事項欄に記載されるのみとなります。

養子になっても実父母との親族関係は残り、養子は戸籍には実親の名前が記載され、養親と養子の続柄は『養子(または養女)』と記されます。

これにより養親と養子の間には相続権が発生しますが、養子縁組関係の解消(離縁)も認められれます。

また、妻が戸籍筆頭主となるだけの妻氏婚とは違い、相続のため等で夫が妻の両親の養子となる(夫婦に血の繋がりはないので婚姻も認められる)所謂“婿養子”などにも用いられる制度です。

ちなみに婿養子(法律用語ではないですが“嫁養子”も)の場合、自分の姓ですでに婚姻していれば養親の姓(相手の旧姓)で新たな戸籍を編成することになりますが、養親の姓(相手の姓)で婚姻していた場合は変動なく身分事項欄に縁組をしたことが記載されるだけです。

少し話は逸れますが、この普通養子縁組を行う(相手親の養子になる/相手の養子になる)ことで戸籍上も家族となり、婚姻できないことでのトラブル(相続権や手術等の同意書など)を解決される同性カップルもいらっしゃいますが、「親子や兄弟姉妹になりたいわけじゃないのに…」という葛藤があられることは想像に容易ですし、簡単に「養子縁組したらいいのに」と言えるものではないと思っています。

三つ目は、特別養子縁組

養親は原則25歳以上で配偶者があること(配偶者は20歳以上なら可)・養子は原則15歳未満であること・縁組が成立する前に『6か月以上の監護期間(同居して養育する期間)を考慮』すること等の要件の下、家庭裁判所によって決定されます。

普通養子縁組とは違い養子と実父母との親族関係は解消され、戸籍に実親の名前は記載されず、養親と養子の続柄は「長男」「長女」など実子と同様となります(身分事項への記載はある)。

つまり、関係の解消(離縁)は原則として認められません。

(参考:厚生労働省サイト|里親や特別養子縁組という家族の“かたち”

中でも特別養子縁組は、審査が大変厳しいとされています。

それは、上記の厚生労働省サイト内ページに

一番大切なことは「子どもに対する熱意」

とあるように、里親制度も含め“子供が欲しい大人のための制度”ではなく、あくまで子供の保護・育成が目的であり、すでに実親を亡くしたり実親から育児放棄されたりしている子供たちを最大限配慮するためには当然だと思います。

「同性カップルは親になるべきではない」とは思いませんし、むしろ子がそのカップルと家族になりたいと望むのならば尊重されるべきです。

しかしながら、子供のための制度を根拠に利用して同性婚を求めることには賛成できません

 

 

精子・卵子提供や代理出産を利用すれば実子が持てる?

「精子提供・卵子提供や代理出産を利用すれば、同性カップルだって実子を持てる!」という主張があるかと思います。

それに関わる法律として、令和2年末に『生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(令和2年法律第76号)』が成立し、令和3年3月11日に施行されました(『生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の規律の特例』については、令和3年12月11日施行)。

(参考:法務省サイト|生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律の成立について

代理出産(代理母出産)は認められませんでしたが、不妊治療として精子・卵子または胚の提供を受け妊娠出産し、片方または両方と遺伝子的に血は繋がっていなくとも夫婦2人の実子とすることができる法的根拠です。

そもそも私は、ここまでの医療介入自体に否定的です。

子というのは、自分の出生を選べない(親が性行為や生殖補助医療の利用をしなければ、この世に存在しない)にもかかわらず、想定外の妊娠や「子が欲しい」という親の願望によって生きることを強要される存在です。

子孫繁栄は自然の摂理であり国家の存続にも重要なことであるものの、ただでさえ人生を強要されているというのに、その出自を複雑にする権利が親を含む他者にあるのか?と思うからです。

しかしながら法律が制定された以上は、子が遺伝上の親を知る『出自を知る権利』どころか『遺伝子情報を認知させる義務』など、精子提供・卵子提供による気づかない近親相姦リスクをできる限り取り除くさらなる制度設計が必要であると考えます。

さて、この法律は異性婚カップルの不妊治療において制定されたものですが、これが認められるということは「少なくとも女性同士の同性婚は現行法でも認められていいのでは?」とも考えられます。

男性カップルが実子を持つには人工子宮等がない限り代理出産の利用が必要不可欠となり、現行法では当てはまらないためです。

出産が母体も胎児も命懸けの行為であるのはもちろんのこと、10か月近くの妊娠期間中には母体に大小様々なトラブルが生じます。

身体的なトラブルだけでなく、胎盤を通じて胎児に栄養を与えるため食事バランスを注意したり胎児に影響があるとされる食べ物を避けたり、胎児の呼吸や成長が止まっていないかを心配したり、24時間ずっと自分以外の命を体内で護り育むというのは我が子であっても精神的に簡単なことではありません。

胎児が身体的障害や知的障害を伴って生まれる場合もあります。

それでも命を失うことなく生まれてきてくれれば御の字で、妊娠できても出産可能週数まで妊娠継続できるとも限りません。

胎児が先天的な染色体異常や発達異常など母胎の外では生きられない病気で流産や死産となったり、気をつけていても原因不明で起こる流産や死産もあります。

妊娠し胎内に命を授かった以上、その際の消失感や罪悪感は一生消えるものではありません。

代理出産の国内認可について「貧困ビジネスに繋がる」という反対理由もありますが、私個人としてはそもそも、それほどのことを第三者に金銭を支払うことで強いるという倫理観が甚だ許容できません。

過去に少子化問題の関連で「女性は産む機械」と発言した政治家が批判されたことがありましたが、代理出産こそ女性を産む機械にみなした行為です。

生殖補助医療の中でも、代理出産を根拠として同性婚を求める意見には嫌悪感しかありません。

代理出産を認めない以上、男女平等の観点から生殖補助医療を同性婚の根拠とするのは賛成できません

 

 

同性婚の国際結婚問題

国際結婚の場合、婚姻するだけでは外国人は日本国籍は取得できませんが、配偶者ビザの申請が可能(本人または日本人配偶者の所得など要件あり)となります。

雇用契約によって取得できる/失効する就労ビザと異なり、配偶者ビザでは職業や就労の制限なく日本に在留できるため、永住権の取得や日本国籍への帰化も目指しやすくなります。

配偶者ビザの存在意義は、婚姻制度と同じく「子の育成のため」というのが大きいのではと考えます。

配偶者ビザで在留資格を保持していれば雇用先は就労ビザを申請する必要がないため、自身が妊娠出産を控えている場合など外国人配偶者に日本で就労してもらいやすくなります。

配偶者ビザがあれば就労の義務なく在留できるため、外国人配偶者が妊娠出産を控えている場合にも大きなメリットです。

それらはつまり、日本国籍を有する子が在留資格によって片親と引き裂かれることなく共に日本で暮らせる環境を提供しやすいということで、子の育成にとって有益な制度です。

ただ、その在留資格や永住権への切替などのメリットから、移民ビジネスのための偽装結婚が問題ともなっています。

「異性婚だけでも偽装結婚はあるのだから、同性婚を認めても同じ」との意見もありますが、同性とも結婚できるとなれば、その対象は単純に倍になります。

偽装結婚への警戒から、異性婚のみだけが認められている現在でも審査要件は徐々に厳しくなっています。

同性婚を認めれば配偶者ビザの要件はさらに複雑で厳しくなるのは想像に易く、上記の養子や生殖補助医療もより絡むことになるため、子の育成へも大きな影響が考えられます。

生殖補助医療を想定しなければ、同性愛では子を授かる可能性が0であり妊娠出産期間が確実にないため、外国人は就労ビザで在留することで日本人パートナーと共に日本で暮らすことも可能です(就労ビザからでも永住権取得が目指せます)。

婚姻にまつわる法律を改正するのではなく特別法を新たに規定しアジア初の同性婚合法化国となった国に台湾がありますが、現行法を改正せずに配偶者特別控除や配偶者ビザを除いた特別法としてなら日本でも同性婚を合法化してもいいのではないかというのが私個人のスタンスです。

とはいえ、婚姻制度として現行法と特別法が平等ではないという懸念や憲法との兼ね合いもあるので、簡単ではないとも思います。

 

 

上記のように他の制度と絡む問題に対して、「個人の自由」「選択肢が増えるだけ」「あなたには何の影響もない」というのは、あまりに勝手で無責任ではないでしょうか。

また、「日本は遅れている」「時代にそぐわない」というのも同意しかねます。

宗教上の理由などから元々は同性愛自体が禁止されていた国も多くありますし、公の婚姻制度がどのような目的のため設けられ運用されているかは国によります。

そもそも、進んでいるだとか遅れているだとかは一つの価値観で判断したものに過ぎず、物事の正誤とは無関係です。

感情での意見も大事だと個人的には思いますが、国民の生活に直結する制度や法律は国家運営の危機管理と深く関わることですので、感情だけで判断すべきではないと考えます。

抜本的な改革は聞こえはいいですが根幹を揺るがすものであるため慎重になるべきで、根幹を揺るがさずに問題を解決できるならばそれがベストではないでしょうか。

まずは生じている問題一つ一つについてきちんと向き合い解決していくことの方が、全体にとっても利があり受け入れられやすいと思います。

 

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