今回の住民投票において争点とさ…
政令指定都市って?
政令指定都市の成り立ち
明治維新以降、都市化がすすんだ日本。
中でも近代化が急激に進む大都市で、農村と同じ制度による行政では人口増や都市開発などに対応できなくなるのは当然のこと。
そこから、都市には特別な制度が必要と考えられるようになり、1878年(明治11年)に東京府東京市・京都府京都市・大阪府大阪市を三大都市とし、現在のような行政区を設置、より細かい行政制度を実施したのが大都市政策の始まりです。
その後、大都市は六大都市(東京市・京都市・大阪市・横浜市・名古屋市・神戸市)となりますが、1943年に東京府が都政へと移行し東京市を23区の特別区としたため、東京を除いた五大都市となります。
1947年には、国が大都市の府県からの独立制度設けますが、大都市への権限がなくなる府県が猛反発。
そこで、府県の権限の一部を移す制度として設けられたのが政令指定都市。
1956年に五大都市が政令指定都市となりました。
政令指定都市の権限と利益
政令指定都市になると、都道府県とほぼ同格の地方自治体として扱われるようになります。
どういうことかというと、都道府県議会を通さず国に要望提出ができるようになります。
また、警察など一部事業をのぞき、保健・福祉、教育、都市計画、レスキュー隊の設置など市の機関を設けたりして独自に行えるようになります。
学校や病院に都道府立県立のように〇〇市立の公立施設があれば、それは政令指定都市により運営されているもの。
何より、財源確保の面で利益が大きいです。
都道府県から移行された事業に関わる財源(税収)も、もちろん移行されますが、これは事業で消えてしまう分。
すなわち、
●宝くじ発売元となれる
●地方交付税交付金が増額される
●地方債における市場公募債を発行できる
この三点が特にキーポイント。
宝くじの発売元となれる
通常、宝くじの発売元は各都道府県。
宝くじの収益は発売元の収益となるため、政令指定都市が宝くじ発売元になる=収益は政令指定都市のものとなります。
地方交付税交付金が増額される
地方交付税交付金とは、地方自治体の財源調整のために消費税等の国税から地方自治体に割り当てられる資金のことで、国庫支出金と違い、使い道を国に指定されない一般財源です。
地方交付税交付金には、普通交付と災害時等の緊急財政需要のための特別交付があります。
国調人口等より算定された基準財政需要額(どれくらいお金がいるか)から、税収見込額等より算定された基準財政収入額(どれくらい収入が見込めるか)を引いた財源不足額が、普通交付額となります。
政令指定都市になると担う事業が増えることで、住民サービスの向上のための支出が大幅に増えるため、基準財政需要額が上がります。
結果、地方交付税交付金の増額へと繋がるわけです。
政令指定都市である大阪市への平成26年度普通交付金は約353億。
政令指定都市を含む全1719市町村の平均交付額約43.1億
(54市町村の非交付団体=普通交付金を必要としない市町村を除いた平均でも約44.5億)を大きく上回ります。
大阪市が解体され特別区制へ移行した場合、各区には中核市(市は権限力の強い順に政令指定都市、中核市、一般市と分けられます)並みの権限を与えるとしながらも、当たり前ですが、特別区は市町村ではないので交付金の対象ではありません。
都構想では、大阪府の普通交付金額が特別区分も増えること、いわゆる二重行政解消でコストカットができること、さらに中核市ならば重要な財源となる法人住民税や個人資産税等を府が徴収することによって、財源調整制度で各区へ予算を分配、財源を保障するとしています。
中核市並みの権限とは?という疑問は置いておいて。
行政のコストカットがされる以上、特別区分の普通交付金額が高額加算されるとは考えづらいですし、コストカットの信憑性やコストカットによる長期的収入減少等の不安も考えられます。
↓上記について詳しく↓
単純に大阪府全体の財源のカットに繋がるのではないでしょうか。
地方債における市場公募債を発行できる
地方債は、地方公共団体(主に都道府県)が発行できる公債。
公債とは、元本と利子の返済を将来の税収でまかなうことを条件に、原則として証券発行という方式で行なう借入金のこと。
つまり、クレジットカードやローンのようなもので公債総額がただちに赤字になるのではなく、期限にきちんと返済できる見通しがあれば赤字とは言えません。
地方債は、公的資金によるものと民間等資金によるものに分類され、民間等資金によるものは公募地方債と銀行等引受債に分かれます。
この公募地方債に、政令指定都市も発行できる市場公募債が当たります。※市が発行する場合は市債とも呼ばれる
この市場公募債を発行することで、財源の補填ができます。
そもそも公債とは将来の税収に頼った借入金であり、租税は国民・住民から徴収されるものであるため、国民・住民の借金ではなく、政府や自治体が国民・住民から前借りしているもの。
さらには、住民参加型公募地方債のように、債券を発行する自治体に住んでいる地域住民や法人などが債券を購入=住民が直接的に貸し付けを行っている場合もあります。
大阪都構想のサイトを含めメディア等では、公債残高すべてを国民・住民の借金などとして換算されがちですが、その解釈は論理的ではないと感じます。
大都市に経済や税収、人口が集中しすぎてしまうなど政令指定都市制度の是非はともかく、現行制度において、政令指定都市である大阪市は宝くじの収益や地方交付税交付金制度、市債の発行という収入要素によって財源を保っているのは明らかであり、大阪都構想により大阪市が解体され特別区となった場合に今と同等の財源を確保できるとは思えないというのが私の見解です。
これら政令指定都市としての収入要素がなくなっても、本当に現行の住民サービスはキープできるのでしょうか?
政令指定都市になるには
政令指定都市になる条件は、人口が50万人以上であること。
ただし、すでに政令指定都市である市と同格の人口を擁する必要があるため、実質70〜80万人以上。
また法令規定はないものの、市議会議決→県議会議決→総務大臣へ要望提出→関係省庁協議→閣議決定→政令公布という手続きがあり、すでに政令指定都市である市と同等の行政能力を有することが考慮されます。
そのため、県庁所在地でも政令指定都市ではない市はたくさんあります。
2015年5月現在、県庁所在地で一番最近政令指定都市になったのは、2012年の熊本市。
県庁所在地以外だと、2010年の神奈川県相模原市。
四国にはまだなく、それだけ目指している市が多いということです。
大阪都構想に関して言えば、特別行政区制度が上手くいかず借金が増えた状態で大阪市に戻ったとして、すぐさま政令指定都市に戻れる法律は現在ないので、マイナスから政令指定都市を目指さなくてはならず、今と同じ状態の大阪市に戻れる保障は、現在ありません。
参考:政令指定都市wikipedia/あなたの住む都市が、政令指定都市になったら
/総務省地方財政制度ページ/大阪都構想公式サイト/地方債wikipedia
/オリコンCSランキング・証券『「地方債」とは』ページ
↓メイン記事に戻る↓