争点「二重行政」「住民自治」

今回の住民投票において争点とされているのは、「二重行政」及び「住民自治」だと思います。

大阪都構想サイトにある主張をもとに、この2点について考察したいと思います。

「二重行政」とは?

そもそも大阪市は、大阪府からなかば独立した自治体です。

大阪都構想サイトでは、教育・病院・都市開発等について大阪府と大阪市で同じ事業展開を行っていることを、いわゆる二重行政による税金の無駄と指摘しています。

しかし本来、大阪府の財政も大阪市の財政も健全なのであれば、府立学校と市立学校、府立病院と市立病院など住民サービスの選択肢が増え対応度が上がること、市営事業と府営事業で、会計を分けた事業分担ができることから、一概に無駄とは言えないのではないでしょうか。

また、府市それぞれで行ったベイエリア開発双方とも経営破綻したこと、類似施設及び大規模投資開発プロジェクト、いわゆるハコモノ行政で投入された税金額に対し、毎年約300億~400億円の通常収支不足が見込まれているそうですが、これは大阪市にも大阪府にも言えること。

これらは二重行政による無用な競い合いというよりは、バブル経済によるプロジェクトに起因するものという見方もあります。

大阪都構想によって住民自治はどう変わる?

大阪都構想サイトでは、「大阪市民268万人の人口に対して大都市大阪はたった1人の代表」「京都府人口263万人、計26市町村に対し26人の市長・町長・村長」「広島県人口285万人、計23市町に対し23人の市長・町長」とし、「選挙があるからこそ、住民の声が役所に反映される」と主張しています。

しかし、日本は議会制民主主義の国。

議会制民主主義において、首長は行政の責任者であって、住民の代表はあくまで議員

よって、比較対象としてそぐわないかと思います。

参考として京都市wikipediaより、政令指定都市である京都市は人口147万人に対し市議会議員67人、1人が21,940人を代表します。

広島市wikipedia広島市議会wikipediaより、同じく政令指定都市である広島市は人口117万人に対し市議会議員55人、1人が21,272人を代表します。

対して、大阪市/大阪市会ページによると大阪市も政令指定都市として現行24区の行政区ごとに人口に比例して割当てられた大阪市議会議員が選出されており、議員定数は条例で86人となっています。

1人が31,162人を代表する計算です。

都道府県議会や政令指定都市の市議会では議員数が多いほど民意の反映を担いますので、大阪市に関しては議員が少ないとも考えられます。

※維新の会は大阪府議会議員定数削減条例を成立させました。

ある程度自由な権限と財源を有する政令指定都市と、ほとんどの事項を府や県にの承認を必要とする政令指定都市以外の市や自治体では、住民自治としての民意の反映度が異なるのです。

よって、自由な権限と財源を失った状態である特別区の区会議員数が多くても、住民自治の反映度は低くなるのではと考えます。

また、個性ある区政運営を選ばれた区長に任せるとしながら、特別区別のマニフェストの存在にも疑問を感じます。

以上の点と以下の大阪府の現状と大阪市の現状記事から、


大阪都構想によってどういったことが大阪にもたらされるかを考えます。

公債残高の増え続ける大阪府と橋下市政以前より公債残高を確実に減らし続けている大阪市の財政を統合した結果、大阪市の財産である事業やハコモノを現行大阪市民の意見が反映されにくい状態、大阪府の独断で売却(民営化)され、大阪府の公債残高返済へ充てられるのではないでしょうか。

中でも、維新の会が掲げる黒字事業である大阪市営地下鉄の民営化に関しては、大阪市民が市税を費やして培った大阪市の重要な長期収入を手放すことになります。

経済発展のための鉄道網発達という点では、大阪府下全域への地下鉄の拡大にかかる事業投資よりも私鉄やJRの発達している大阪府としての利点を生かし、各鉄道会社と市営地下鉄の線路乗り入れ等で対応することで事業コスト削減を目指せるのではないかと個人的には考えます。

大阪市営地下鉄は大阪市外にも伸びているため現行でも持ち出しになっているとの主張もありますが、大阪市外の住民の方々は利用料としての負担のみ、大阪市民が税金をつぎ込んだ市営地下鉄の収支は黒字、世に言うwin-winの関係が成り立っているので問題はないかと思います。

橋下市政では、大阪市の誇る重要無形文化財である伝統芸能・文楽の文楽協会への補助金打ち切りや、歴史的建造物として価値のあった大阪市立精華小学校を民間に売却、取り壊しの済んだ状態で再開発計画が頓挫するという事象も起きています。

単純な売却や予算カット、新規事業投資ではなく、元からある土地や環境を生かした町づくりを目指すのが本来の地方行政の姿ではないでしょうか。

ちなみに、神戸市は旧北野小学校の校舎を利用して北野★工房のまちという施設を運営、2015年3月には年間来館者数100万人を達成しています。

また、維新の会による人件費削減を大義名分に掲げる財政運営には少し違和感があります。

人件費を削るため、嘱託職員等(公事業におけるアルバイト職員のようなもの)を減らし、公共サービススタッフの民間委託を増やした結果、サービス利用者は公共サービスでありながら従事者に対して公僕としての責任を問えず、サービス従事者の労働環境も悪化していると耳にしたことがあります。

本来ならば公僕としての重大な責任を背負い、住民に代わり職務を果たしてくれている存在である議員・官僚・公務員にかかる人件費は、本当に必要のないものなのでしょうか?

何より、大阪府が大阪市を財産もろとも飲み込んだだけでは大阪府の負債残高を賄えるとは思えませんし、ほかに歳入確保策として何をあげているのかといえば大阪都構想サイトにある広域マニフェストによると、「IRに対する免許へ課税」「パチンコに対する課税」の二策のみであり、その試算もなければ、どちらも国の法整備が必要とのこと。

現状では不可能なことは歳入確保策とは言えないし、そんな状態の政権を信用できるでしょうか。

そもそも、現状のまま公債残高を減らしていきたい大阪市議会に対案として「大阪都構想」なる具体案の見えないものを提案して来たのは維新の会側であり、対案の対案を要求していることも無茶苦茶です。

維新の会は、「大阪府と大阪市が同じ方向を見ていなくては大阪の改革はない。維新の会による政権でなくなっても同じ方向を見ていくために、府市統合が必要である」と大阪都構想の意義を主張しています。

しかし私は、都道府県の独断による無茶な財政のせいで多数の人口を抱える大都市が破綻しないような歯止めになるべく、大都市が単独でも運営できることで日本経済を支えられるよう考えられたのが政令指定都市という大都市政策の根本ではないかと思います。

いわゆる二重行政こそ、民主主義における住民自治の砦、大都市政策及び政令指定都市の存在意義なのではないでしょうか。

大阪全体をも担う政令指定都市として考えれば、大阪市が大阪府のものとなってしまって共々破綻するよりも大阪市として残り、大阪府財政を支援する道を探るほうが現実的であると私は考えます。


上記リンク先の政令指定都市って?記事にあるように、大阪市が一度なくなってしまっては現状復帰は難しく、大阪市が解体されることは大阪全体のためにも避けなければならないのです。

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