大阪府の現状と大阪市の現状

大阪府の現状

2008年の橋下氏の知事就任後、大阪府は11年ぶりの収支黒字化。

2011年までの就任期間中、3年連続黒字。

…とメディアでは騒がれました。

しかし、2012年度に大阪府が公表した健全化判断比率によると、実質公債比率が18.4%となり、起債許可団体となってしまいました。

↓公債について↓

国の定めた基準により、収入の公債比率が18%を超えると、公債を発行するのに国の許可が必要となります。

この状態を起債許可団体といいます。

公債比率が25%〜35%となると「一般単独事業」区分の公債発行が許可されなくなります。

この状態を財政健全化団体といいます。

財政健全化団体とされてしまうと、財政健全化計画に基づき、住民サービスを削ってでも歳出の抑制や歳入の確保に取り組まなければなりません。

さらに、公債比率が35%を超えると財政再生団体となり、災害関連を除く一般公共事業と教育・福祉施設等整備事業という住民サービスに直結する公債発行が許可されなくなります。

そして、2013年2月に大阪府が発表した試算によると、2018年度には財政再生団体に陥る恐れがあるとされました。

収支は黒字になったのに、借金まみれ。

どういうこと?大阪府に何が起きているの?

歳入・歳出(収入・支出のこと)は税収や社会保障による一般会計と

事業による特別会計から成りますが、大阪府の一般会計歳入/歳出の内訳府債残高減債基金残高(府債返済のための預金)橋下氏の知事就任以前/就任期間中/離職後(現在)で振り返ってみます。

大阪府公式サイト|大阪府決算の状況について大阪府債IR情報|財務ハイライト
   大阪府債IR情報|減債基金についてより(単位以下切り捨て)

橋下氏の知事就任以前(2007年度)

一般会計歳入合計…3兆572億円

税収(府税・地方譲与税)…1兆4307億円(46.8%)

地方消費税清算金…1688億円(5.5%)

交付金…1939億円(6.45%) 国庫支出金…2351億円(7.7%)

分担金/負担金…204億円(0.7%) 使用料/手数料…776億円(2.5%)

財産収入…303億円(1.0%) 寄付金…1億1100万円(0.004%)

繰入金…840億円(2.7%) 繰越金…169億円(0.6%)

諸収入…5514億円(18.0%) 府債…2476億円(8.1%)

一般会計歳出合計…3兆409億円

人件費…9209億円(30.3%)

負担金・補助及び交付金…6575億円(21.6%)

貸付金…5050億円(16.6%)

償還金・利子及び割引料…2701億円(8.9%)

工事請負費…1249億円(4.1%)

委託料…868億円(2.9%)扶助費…313億円(1.0%)

補償・補填及び賠償金…256億円(0.8%)

その他…867億円(2.9%)積立金…108億円(0.4%)

繰出金…3209億円(10.6%)

★形式収支上は162億円の黒字。

ただし、翌年度へ繰り越すべき財源として175億円の黒字になる必要があるため、実質収支としては約13億円の赤字となります。

府債発行額…6692億円(うち借換債3750億円)

府債残高…5兆8286億円

減債基金残高…2114億円(国ルールに基づく必要額は6029億円)

★歳入として、減債基金から680億円の借入(2001年度〜2007年度で合計5202億円の借入)を行っていました。

橋下氏の知事就任期間中(2010年度)

一般会計歳入合計…3兆9168億円

税収(府税・地方譲与税)…1兆1729億円(29.9%)

地方消費税清算金…1667億円(4.3%)

交付金…3132億円(8.01%) 国庫支出金…2869億円(7.3%)

分担金/負担金…74億円(0.2%) 使用料/手数料…626億円(1.6%)

財産収入…139億円(0.4%) 寄付金…5億464万円(0.01%)

繰入金…7521億円(19.2%) 繰越金…250億円(0.6%)

諸収入…7107億円(18.1%) 府債…4044億円(10.3%)

一般会計歳出合計…3兆8846億円

人件費…8319億円(21.4%)

負担金・補助及び交付金…6646億円(17.1%)

貸付金…6745億円(17.4%)

償還金・利子及び割引料…9310億円(24.0%)

工事請負費…965億円(2.5%)

委託料…747億円(1.9%)扶助費…514億円(1.3%)

公有財産購入費…307億円(0.8%)

その他…594億円(1.5%)積立金…1574億円(4.1%)

繰出金…3121億円(8.0%)

★形式収支上は321億円の黒字。翌年度へ繰り越すべき財源を64億円とし、実質収支も257億円の黒字としました。

府債発行額…8235億円(うち借換債4033億円)

府債残高…6兆739億円

減債基金残高…1665億円(国ルールに基づく必要額は6847億円)

★橋下知事就任により、2008年度より減債基金からの借入をストップし、2009年度及び2010年度に借入金の全額返済を行いました。

しかし、その返済は税収からではなく(税収は大幅に減っている)、府債発行増額によるもの。

つまり、別の借入金によって切り崩していた分の預金の穴埋めを行ったということ。

結果、基金積立必要額は上がってしまっています。

また、予算黒字分を減債基金の積み立てに回せばよかったのですが、WTC等の公有財産購入費として2010年度で307億円という出費を行っています。

収支上は黒字でも借金額は増えたいうのが実状です。

橋下氏の離職後《現在》(2013年度)

一般会計歳入合計…2兆9365億円

税収(府税・地方譲与税)…1兆2626億円(43%)

地方消費税清算金…1656億円(5.6%)

交付金…2924億円(10.04%) 国庫支出金…2545億円(8.7%)

分担金/負担金…51億円(0.2%) 使用料/手数料…184億円(0.6%)

財産収入…220億円(0.8%) 寄付金…84億円(0.3%)

繰入金…673億円(2.3%) 繰越金…78億円(0.3%)

諸収入…4537億円(15.5%) 府債…3781億円(12.9%)

一般会計歳出合計…2兆9013億円

人件費…7921億円(27.3%)

負担金・補助及び交付金…7300億円(25.2%)

貸付金…4162億円(14.3%)

償還金・利子及び割引料…2572億円(8.9%)

工事請負費…774億円(2.7%)

委託料…505億円(1.7%)扶助費…408億円(1.4%)

需要費…172億円(0.6%)

その他…488億円(1.7%)積立金…1138億円(3.9%)

繰出金…3569億円(12.3%)

★形式収支上は352億円の黒字。翌年度へ繰り越すべき財源を128億円とし、実質収支も223億円の黒字としました。

府債発行額…9304億円(うち借換債5289億円)

府債残高…6兆3293億円

減債基金残高…3101億円(国ルールに基づく必要額は8625億円)

※減債基金残高は2013年度当初予算より

★一般会計と特別会計の合計歳入額は4兆3092億円。

実質公債比率は19.0%となり、起債許可団体の基準に達してしまっているというわけです。

また、借換債の発行が5289億円となっていることから、返済期限の迫った多額の府債に対して新たな府債を発行することで返済を先延ばしにしている状態であると言えます。

大阪市の現状

ONE大阪・大阪都構想サイトによると、大阪府の借金は東京都の1.2倍なのに対し大阪市の借金は東京都23区の13.7倍だそうです。

これを見ると、大阪市の財政状況は起債許可団体となった大阪府以上に悪いようです。

しかし、政令指定都市では上位に入る優良財政との声もあり、実際、大阪市は起債許可団体ではありません。

起債許可団体ではないのに、大阪府よりも財政状況が悪い?

こちらも、大阪市の一般会計歳入/歳出の内訳市債残高公債償還基金残高(市債返済のための預金)を橋下市長及び維新の会による功績か否かを同時に探るべく、橋下氏の市長就任以前/就任後(現在)で振り返ってみます。

大阪市サイト|財政局ページより(単位以下切り捨て)

※市税におけるAは特別区となった場合も区税となるもの、Bは特別区となった場合に府に徴収されるもの。

橋下氏の市長就任以前(2010年度)

一般会計歳入合計…1兆6790億円

市税…6260億円(37.3%)

  内訳:A個人市民税・市たばこ税・軽自動車税1568億円

     B法人市民税・固定資産税・都市計画税・事業所税4692億円

交付金…1161億円(6.9%)

国庫支出金含む、その他特定財源…7767億円(46.2%)

臨時財政対策債…910億円(5.4%)その他公債収入…541億円(3.2%)

補てん財源…不用地売却代107億円/蓄積基金繰入63億円(1.0%)

一般会計歳出合計…1兆6776億円

人件費…2294億円(13.7%) 扶助費…4876億円(29.0%)

経常的施策経費及び管理費…1273億円(7.6%)

投資的・臨時的経費…3519億円(21.0%)

公債費…2198億円(13.1%) 特別会計繰越金等…2613億円(15.6%)

★形式収支上は13億円の黒字。翌年度へ繰り越すべき財源を9億円とし、実質収支も4億円となり、1988年度以降22年連続の黒字としました。

全市債発行額…1452億円(臨時財政対策債911億円/その他541億円)

市債残高…5兆624億円(実質市債残高2兆4287億円)

公債償還基金残高…3112億円

★臨時財政対策債の償還に要する費用は、後年度の地方交付税交付金算定における基準財政需要額に全額算入されます。

それを除いた実質市債残高は2兆4287億円。

公共事業費の減少によって新たな市債発行を抑制しており、もちろん公債償還基金からの借入は行わず、基準額に沿い積み立て、公債償還基金残高は確実に増えています。

結果、実質市債残高も全市債残高も6年連続で減らせています。

また、特別会計を含めた実質公債比率は10.4%で、財政健全化団体とされる基準も下回っています。

橋下氏の市長就任後《現在》(2013年度)

一般会計歳入合計…1兆7155億円

市税…6418億円(37.5%)

  内訳:A個人市民税・市たばこ税・軽自動車税1688億円

     B法人市民税・固定資産税・都市計画税・事業所税4730億円

交付金…1147億円(6.7%) 国庫支出金…3479億円(20.3%)

その他特定財源…4524億円(26.4%)

臨時財政対策債…953億円(5.6%)その他公債収入…591億円(3.5%)

一般会計歳出合計…1兆6864億円

人件費…1977億円(11.7%) 扶助費…5059億円(30.0%)

経常的施策経費及び管理費…1264億円(7.5%)

投資的・臨時的経費…2868億円(17.0%)

公債費…2405億円(14.3%) 特別会計繰越金等…3289億円(19.5%)

★形式収支上は250億円の黒字。翌年度へ繰り越すべき財源を8億円とし、実質収支も242億円の黒字となります。

黒字の要因は、人件費の削減や施策・事業の見直し等を進めたこととしています。

全市債発行額…1544億円(臨時財政対策債953億円/その他591億円)

市債残高…4兆8257億円(実質市債残高2兆2031億円)

公債償還基金残高…4605億円(予算額より)

公債費収入を増やしながらも、支出としての公債費も増。

例年どおり公債償還基金からの借入は行わず、基準額に沿った積み立てで、公債償還基金残高増。

結果、実質市債残高も全市債残高も9年連続で減となりました。

尚、特別会計を含めた実質公債比率は9.4%。

人件費削減等による住民サービス変化の善し悪しは別として、橋下市政によって収支黒字額が増加したのは事実のようですが、大阪市は以前より収支黒字・市債残高減少・公債償還基金積立増加を実現していました。

よって、ONE大阪・大阪都構想サイトでの大阪府と大阪市の借金額については、満期一括償還に備え公債償還基金をきちんと積み立てできているか否かを考慮せず、公債残高=借金として比較したことが間違いと言えるのではないでしょうか。

権益はどこにだって生まれます。

もちろん、それを是正していく必要はありますが、既得権益云々の前に、結果として出ている財政状況を判断すべきです。

※本記事内の数字に関しては、上記データより素人の私自身が算出したものを含み、計算間違いなど信憑性に欠けるかと思います。悪しからず。

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